サン・ルイ記
 

<重量輸送機、ペリカンの繁殖地>

 翌日の1月4日土曜は朝8時過ぎから、サン・ルイから北東に60kmのところにあるジュッジ鳥類国立公園=PARK NATIONAL DES OISSEAAUX DU DJOUJIに向かうが、約1時間半かかった。30分ぐらいは舗装した道路を走ったが、途中から左に折れ、荒れたでこぼこ道をラリー状態で走る。車は三菱のランサー、妻は四輪駆動を買わなかったことを後悔しているようだ。
 広大な土地、灌木だけの砂漠と土漠を抜けると湿地帯に入る。ここを、さらに北に行くとセネガル川が流れ、その先はサハラ砂漠の西部にあたるモーリタニア共和国である。本当にその先に砂漠があるのか分からないくらいの湿地帯となっていた。地図を確認しないと方向感覚が分からなくなっている。


ボート乗り場

コルモロン

 行き先のジュッジ鳥類国立公園はフラミンゴをはじめ、様々な鳥の楽園として知られており、ユネスコの世界自然遺産にもなっている。11月〜4月は欧州からの渡り鳥の飛来地になっており、この時期は巨大とも言えるペリカン、それにコルモロンと呼ばれる鵜などが見られた。
 とにかく広大である。10人ぐらいが乗れるボートで約1時間沼地をめぐる。我々の1艘だけかと思ったが、途中で3〜4艘のボートと出会う。結構観光客がいるようである。ボートから岸辺を見渡すと様々な鳥たちが観察できる。妻はガイド役からいつの間にか図鑑を買っており、比較対照しながら見入っている。
 圧巻はペリカンの繁殖地である。岩盤だけの島に何百匹?頭?のペリカンが蠢いている。その水面上を滑降する姿は、巨大な爆撃機、輸送機を思わせる。故に“ペリカン便”があると納得した。


ペリカン

ワニ

<路と壁の物語>

 午後1時半、再び舗装されていない道をサン・ルイに戻る。不毛とも言える土漠地帯の中に広大な沼地が広がる様は驚嘆するものがあり、自然の不可思議さを感じる。疲れた体にガゼルビールがたまらなく美味しい。昼食はモロッコ料理、レンズ豆の煮物は小豆に似た味で美味しい。

 そう言えば、11月に来た時に当地の日本人から面白い話を聞いたことを思い出した。『夏暑い時にセネガルからギニア国境近くまで旅行をしたが、田舎町のホテルに泊まった時、汗を大量にかいたため「このホテルはお湯が出ますか?」と思わず聞いてしまった。その一言への反応は「何を馬鹿なことをいうのだ」という顔をしていた。その心は「お湯は出るけど、水は出ない!?」である。そう、昼間暖められた水が熱湯になってしまい、さますことは出来ないのだということである。』
 午後3時過ぎ、ダカールへの帰還の途につく。ダカールへの帰りの道のりは遠い。車の中から見える風景は、時間が経つのとは反対に止まったように流れない。ひたすら、風だけが流れている。長い道程である。車の中でとりとめもなく考えること多し。

何もない土地を一人の人間が歩く。ガゼルや馬などの動物の足跡も残る。
そして、多くの人々が歩き、路が出来る。車が通るようになり、轍となる。
その路は次第に広がって道になる。
路の両側に石を積み上げた壁が出来る。その石壁、土壁に入り口が出来る。
そして、屋根がつき、壁に色が塗られる。壁の一部はドアとなり、鍵を取り付ける。
さらに、塀という仕切りが生まれたとき、その家には独占の心が住み着く。
そこには“善と悪の文化”が生まれる。そして、社会のしきたり事が拡大していく。
個人とは、家族とは、社会とは、文化とは、路と壁はその原点である。

 夜8時前、ダカールに到着した。
新たなダカール生活が始まる。

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