カナリア諸島記


【星の数ほど、テネリフェの・・・】

 我々はこの地に3日滞在し、次の目的地テネリフェ島に向かう。午後3時にジェットフォイルに乗り1時間半。ビジネスクラスもあり、約200人程度が乗れる船である。波も穏やかであり、快適な乗り心地である。

 船の中で大島氏の熱き思いがさらに語られる。
★大島曰く、
「大瀧詠一の“カナリア諸島にて”が僕の青春の歌だったな。これを聴いたのがきっかけでカナリアを知り、ずっとこの島に憧れてきたのです。明日は、♪アイスティーにオレンジを浮かべて飲むのだ。」

 と言って、ずっと口ずさんでいた。


フェリー乗り場

テネリフェ島

 船はテネリフェ島の中心地サンタ・クルーズに到着。気温20度、埠頭から見える街並みは整然としており、車の車線の間に並木の囲まれた遊歩道があるストリートも美しい。
★大島曰く、
「テネリフェはグラン・カナリアの西110km、人口は40万人です。このサンタ・クルーズは14世紀に栄えた港町で、見ての通り近代的な中にも昔の面影が残るきれいな町で、明るく活気がありますね。この島はミニ大陸とも言われていて、グラン・カナリアが溶岩、砂漠、美しい海岸線を持つに対して、美しい山と深い緑があります。これはおそらくアフリカから遠いせいですね。」

 と、ガイドブック以上の知識を披露する。

 我々はタクシーに乗り、観光の中心地プエルト・デ・ラ・クルスに向かう。左手に大西洋を見ながら高速道路を走る。右手には長い稜線と岩肌を持つ山並みが続き、山裾は広大である。
★大島曰く、
「あそこに高い山が見えませんか?スペイン最高峰のテイデ山です。なんと3718mあるのですね。かつては先住民のグアンチ族の聖地だったそうで、既に混血が繰り返され、はっきりとわかる住民はもういないそうですね。アナちゃんは末裔なのかな? そう、この風景は新幹線から眺める富士山の裾野の風景と似ていませんか。」

 45分程度で“HOTEL エスメラルダ”に到着。ここ観光の中心地プエルト・デ・ラ・クルスにはホテルが建ち並ぶが、まずは星の数ほどのホテル群に驚く。まるで熱海と江ノ島を合わせたような雰囲気で、これだけのホテルがあって経営が成り立つのかを考えてしまう。さらに、お土産屋と各種のレストランが、これまた星の数だけある。


プエルト・デ・ラ・クルス

プエルト・デ・ラ・クルス

【イカタコならぬイルカ・クジラ】

 チェックインを済ませ、夕方のドリンクタイムに入る。勿論、大島氏はウィスキーのダブルである。私の妻は「何か変だね、このホテルにはお年寄りとペットばかり」と言う。
★大島曰く
「やはり感じましたか、ジッチャンバッチャンばかりですね。農協のツアーでも入っているのかな。確かヨーロッパの避寒地だから、今がハイシーズンのはずだ。確か紹介してくれた人は泊まったことがあり、高級ホテルと言っていたはず。それにしても料金は安い。ペットも連れてこられるのか。そう言えば、妻と2匹の犬は元気にしているのだろうか」

 そう言いながら、バーのお兄ちゃんとはアミーゴになり、ウィスキーのダブルを並々と注いでもらっている。と思えば、フロントの“ネーチャン”には英語で「へえぇ、乗馬をやっているの?乗馬でなく乗男(じょうだん)は・・・」と英語でジョーダンを言っている。まさに、商社マンの情報収集はこれだという姿を垣間見た。
 でも、私には言えない。

 妻は「明日はどうなさいますか」と問う。
★大島曰く、
「僕は高所恐怖症でして、高いところに登るのは駄目ですよ。えぇ?“イカタコ・ウオッチング”ですか?そんなのあるのですか?えっ、違う、“イルカ・クジラ・ウオッチング”ですか。行きますよ。実は私は昔、船を売っていたことがあるのです。インドネシアに駐在していたときですがね、今でもあそこは大好きですね。年を取って住むならインドネシアが一番です。」

 翌日、2時間ほどのイルカ・クジラ・ウオッチングに出掛けた。イルカのようであったが、小さな鯨を見ることが出来た。大島氏は下船後、気持ちが悪くなり、船酔いをしたという。実は船は苦手であったという。いい人である、最後まで弱みを見せない気丈な大島氏に感心した。


ミニクジラ

海から島を見る

 夜、食事に出る。いつも通り、大島氏がフロントの女性から情報収集したレストランである。泊まったホテルからタクシーで15分ほどのところにあり、小さな漁港にある、鄙びた趣のあるレストランという風情である。そこで、カナリアに来て初めて日本人観光客に出会った。とはいえ、ドイツ人と結婚してドイツに住んでおり、やはり避寒にきたとのことである。

 大島氏は船酔いのためか、ほとんど食べられない状態であったが、相変わらずウィスキーのダブルと灰皿は積み上げられていく。
★大島曰く、
「それにしても、あの席に座っている女の子は太っているな、背中から肉がはみ出ている。スペイン料理を食べると、あのようになるのかな。胸よりお腹が大きい。それに比べて事務所のアナちゃんは痩せていて可愛いな。年を取ったら変わるかな。ダカールに連れて行きたい。いや、日本のANAにでも就職させようかな」

 彼の独り言を聞きながらも、我々夫婦は黙々と飲み、食べる。

 ここでもゴルフをすることが出来た。ホテルのフロントで予約をお願いするが、9ホールしか出来ないという。そんなわけがないと思ったが案の定違っていた。そのホテルでゴルフをする客は少なく、そのフロントもゴルフをやらなかっただけである。
翌日、朝一番にコースに行ったが、18ホールを回ることが出来た。
★大島曰く、
「いやあ、本当に素晴らしいコースだ。ダカールの仲間に見せてあげたい。朝早く来て良かったですね。こうやって外人さんとも一緒に回れる。どちらからですか、ノルウエーですか、上手ですね。」

 大島氏はやはりすごい、ゴルフの腕は大波小波を繰り返しているが、初めての人とも直ぐにうち解け、会話をしている。

 我々は、ダカールのゴルフ仲間とこの地で一緒に出来ることを切に願った。そのゴルフ場はチャンピオンシップも開催され、クラブハウスには孔雀もいた。ダカールにはゴルフボールを持ち去るトンビしかいない(保護鳥であるが)。
 ここでもスコアは内緒である。


クラブハウスまで来る孔雀

スタートホール
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